曠野の果てに日輪沈まんとす。天地の間ただ蒼茫たり。
何某、独り荒漠の道を征く。風声蕭々として枯草を渡り、遠く鳥影の一点、暮色の中に没するを見る。人跡まれなる此の地にありて、始めて天地の寂寥を知り、己が一身の渺たるを覚ゆ。
道傍に朽ちたる一樹あり。枝葉ことごとく落ちて、ただ黒き幹のみ天を指す。その姿の孤絶なること、あたかも世に容れられざる者の立ち尽くすが如し。しばし歩を止めてこれを仰ぐに、胸中言ひ難き感慨湧き来たりて、覚えず嘆息す。
そもそも人の世に在るや、皆この枯木に似たるにあらずや。春ありて花咲き、夏ありて葉繁れども、終には霜雪に逢ひて独り立つの日来たらざるを得ず。しかれどもなほ根は地中に深く張りて、容易に倒れざるところに、生くるものの意気あり。
日すでに没して、野は暗澹たり。何某、襟を正して再び歩を進む。
