札幌と旭川という二大都市に挟まれた道央のターミナル駅には、人の声も、レールの弾む音もなかった。耳に入るのは列車の運休を詫びる構内放送と、頭上の屋根を叩く雨粒の響きだけ。ホームに一人。札幌から乗ってきた列車と真新しい試運転列車が膠着する函館本線、岩見沢駅。

この日の道央一帯は局所的な大雨に見舞われ、特急列車は全運休、普通列車の運行も分断されていた。札幌-旭川を移動したい人々はみなバスに流れてしまったのである。私の他に数名いた乗客は列車から降りるなり改札のほうへ消えていった。

現に私が乗っていた列車は当駅止まりで、これに接続する旭川行きの普通列車は滝川という途中駅で運行を取りやめるという。

私は仮に旭川まで行けたとしても用事はないし、岩見沢行きの列車に乗ったのも札幌駅での発車時刻が一番近かったからに過ぎない。ようするに暇なのだ。このままじっとしていても仕方がないし、どうせなら街にでも繰り出そうか、それとも折り返しの列車で帰ろうかなどと逡巡していたら、遣らずの雨だとしてももう少し優しいだろうと言いたくなるような雨が降りだした。こういう雨を昔の人は驟雨(しゅうう)といったらしい。

昼食を挟んで15時を回った頃、ようやく全線で運転を再開したという放送が入った。電光掲示板には特急の文字が灯り、ホームにも人が増えてきて日常が再び現れる。

人がはけてきたので、もとい疲れて集中力が無くなってきたので私もそろそろ切り上げよう。4時間を過ごした駅に別れを告げる。

結局コツは最後まで掴めなかったが、スナップにハマる人の気持ちはわかった気がした。またこういう暇な日があれば挑戦してみたいと思う。