2/7

9時に起床。5時間寝ることができた。

この日はオホーツク沿いを流氷を見ながら南下し、遠軽まで下ってまた旭川まで引き返すという行程だった。

ところで天塩中川の2つ先に糠南という駅があるのだが、どうやら昼前に昨日見送ったラッセルがその駅を通過するようで、特に急ぐ用事もないので寄ることにした。一夜を明かした駅に別れを告げる。

個人的にこの駅は好きだ。初めての北海道旅行を計画するきっかけになったのはこの駅の存在だった。

周囲に建造物の類は全くなく、内地ではまず見られない、列車一両分も満足に収まらない板張りのホームにただの物置が駅舎として置いてある。こんな奇天烈なものが駅として扱われるのが北海道である。

通過時刻も分からないまま外に居続けるのは耐えられないので、三脚とカメラだけ設置して車の中で過ごした。三脚が大活躍だ。貸してくれた友人には感謝しかない。

やがて踏切が鳴ると、旭川方からラッセルではないものがこちらに向かってくる。

旭川からやってきた宗谷本線の主力車両(一両)である。乗降客0の駅を足早に過ぎ去っていく車内に、人の姿はなかった。ちなみにこの次に駅に停まってくれる下り列車は、なんと8時間後の最終列車のみである。

そのまま待っていると車がこちらに向かってきた。ラッセルを追いかけている撮影趣味の方だった。気さくな人で、通過を待つまでのひと時で旅の話に花を咲かせた。今まで撮ってきたラッセルの写真を見せてくれたり、ラッセルのダイヤまで教えてくれたりした。

楽しい時間ほど早く過ぎてしまうもので、踏切が鳴り始めてしまった。おそらく先程の普通列車と行き違いしてきたのだろう。

ラッセルは豪快に雪を巻き上げて通過していった。これもまた北の大地だからこそ生まれた情景なのだろう。

先程の方は次の撮影地に向かった。それを見送り、私は知駒峠を越えてオホーツク海を目指す。

この峠、あまり知名度は高くないが、北海道の中でも指折りの道だと思う。問寒別側から進むと秀峰ピンネシリや中頓別市街、オホーツク海などが目に飛び込んでくる。中頓別側から進むのであれば、サロベツの広大な原野、日本海、その向こうに茫洋と浮かぶ利尻富士を望めることだろう。車窓には雪をたたえたアカエゾマツとダケカンバの針広混交林が広がり、飽きることがない。

冬の道北には特有の淋しさがあると思う。荒涼というのとはちょっと違う、何か圧倒されるような淋しさ。それを感じられるのがこの峠だと思う。

前回通った時はピンネシリ温泉への夜道だったが、昼に走ると見事である。

峠を越えて北オホーツクは枝幸に至り、ここからひたすら海沿いを南下する。

冬のオホーツク海は遠くロシアのアムール川から流れてくる氷に閉ざされることで有名だ。

今年の流氷は過去4年で一番面積が広いらしく、海上保安庁の流氷情報を見ると、樺太から知床までびっしりと氷が覆っているようだった。

枝幸→雄武→興部→紋別と、彼方の水平線までをも埋め尽くす流氷の超景色に圧倒されながら南下していく。

どこを走っていても、どこで立ち止まっても氷。

日本でしか見られないが、およそ日本の景色とは思えない。

紋別には15:30頃に着いた。16:15には、この流氷を砕きながら周遊する観光船がある。今から急げば乗船に間に合うが、そちらには去年乗ったので今回はオホーツクスカイタワーという展望所に行ってみる。

紋別市街地の裏手に聳える小さな小山に建てられた塔からの眺望は見事だった。流氷の情報通りに、氷の大地は知床半島まで続いていた。

16時を過ぎ、日が傾いてくると紋別の観光船が沖に向かって出港する。

あの船の中から見る夕日は見事だろう。山の上からだと、大自然の前では人の営みなど小さいのだなあと思う。

遠軽まで行く予定だったが、そこまで行ってしまうとこの後の旭川の予定に間に合わない。

紋別でオホーツクは切り上げて再び旭川へ。

すっかり日も暮れて、滝上辺りでまた雪が降ってきた。道北は道東と違いよく雪が降る。また、ホワイトアウトも結構な頻度で起きるので油断できない。なお、この道中で初めてダイヤモンドダストに遭遇した。写真で見るより細やかで、明かりに照らされるとチラチラと輝くため、初めは疲れで目がおかしくなったのかと思ってしまった。

旭川には20時頃着き、友人と共に大黒屋のジンギスカンを食べに行った。これがこの日初めて口にしたものだった。

この日はそのまま家に泊まらせてもらい27時に旭川を発って北見へ向かう予定だったが、疲れが酷く、この状態でぬくぬくとした家で横になってしまうと3時間で起きられる気がしなかったので24時に解散してそのまま旭川を後にした。

走り出したはいいものの、やはり疲れで集中力の欠如を感じる。

そういえば、朝に教えてもらったラッセルのダイヤには北見へ延びる道路と併走する石北本線のものもあった。それによると、途中の白滝駅でちょうど北見方からやってきたラッセルと鉢合わせるようだ。

旭川紋別自動車道の奥白滝ICで降り、白滝駅に寄ってみるとやはり赤い巨体が暗闇の中でエンジンを震わせていた。しかし発車までは30分近くあるようで、一旦車に戻って待つことにした。

そのまま寝落ちしてしまうかもしれないと急に不安になり、北見までの所要時間を逆算して一応5時にもアラームを設定した。

ページ: 1 2 3