このサイトを立ち上げて2年以上が経つのに、ずっとサイトのロゴをデフォルトのまま放置していた。
文章さえ書ければいいものだと割り切ってはいるが、さすがに2年も生き長らえてしまうといよいよ外見を整えたくなってくる。実は過去に一度自作しようと試みた経験はあるものの、結果としては生まれながらの美的センスのなさに絶望して早々に投げ出し、どうせ運営も長くは続かないだろうから…と酸っぱい葡萄理論を持ち出して自分を慰めるという有様だった。
そんなこんなで初期アイコンのまま月日を過ごしていたところに、長らく連絡を取っていなかったデザイナーの友人と話す機会がちょうど巡ってきて、あろうことかサイトロゴの作成というところまで話が進んでしまった。巡り合わせとは不思議なものだ。
描いてくれるにあたって彼からはサイトのモチーフやら色の希望云々やらを様々聞かれたが、(自分のサイトなのに)回答に窮して結局最後には全投げしてしまった。そんな情けない自分に代わって彼は過去の記事まで漁ってまでイメージを掴もうとしてくれたらしく、本当に申し訳ないことをしたと思っている。
そして、頼んだことすら忘れかけていたある日、キャプションも添えられていないpng画像が一枚だけ送られてきた。
太陽は日の丸だろう。中央にあって背景が白いので自然と日章旗が想起される。下の台から日の丸の中心に向かって伸びるのは多分宗谷岬のモニュメント。確かに北海道を象徴するもののひとつであり、PC上の小さなタブに表示されてもそれだとわかる上手いチョイスだ。雲まで黒いのも、逆光の構図ととれるおかげで何も矛盾を感じない。配色も絶妙なバランスだと思う。拙い文章で恥じ入るばかりだが、とにかく素晴らしいし理想的だということだ。心の中に散乱する「こんなものがいい」を組み立てるとこうなるのだろうという納得感があった。気づいていないだけで、他にも込められたものがあるかもしれない。
つくづく芸術家というのはものすごい人種だと思う。嫉妬を超えて、もはや畏敬の念すら抱きたくなる。絵や色といった形なき概念を感性という筆をもって思い描き、人の思考の奥底に沈んでいる形而上のものを呼び覚ます。自ら創造し、次元の昇華までをも容易くやってのける。世の中にはそんな人達が存在するのだ。
瞬時に大意を理解でき、また須臾のうちに仕込まれたメッセージに気がつける。芸術性0の人間にまで響くものが確かにある。彼が私の文章にどんな印象を抱いたのかは知らないが、こんなものを見せつけられては、言葉に絶対の信頼を置き、それを紡いでものを語っている当サイトへのアンチテーゼではないかとすら思った。実際彼なら自分が書く記事を全て抽象化して一枚の絵だけで表現できそうなのが怖い。
彼には感謝してもしきれない。このサイトが閉鎖される時まで大事に使わせていただきたいと思う。