本日(22/05/07)は昨日と違って遅めの朝だ

10時にしかバスが出ないのでゆったりと朝をすごせる

日本一豪華な朝食と謳っているエクリプスホテルの朝食は期待通りで、えりも巻をはじめ地産地消に取り組んだメニューが多く、目移りしてしまった

チェックアウト時にフロントで昨夜頼んでおいた日高つぶめしを受け取り、重いリュックを抱えて静内駅(跡)のバス停へ向かう

「様似営業所」の方向幕を目印にバスへ乗り込む

車内は非常に暑く、酔いそうだったので窓を全開にした

乗客は私一人なのでやりたい放題である

静内を発ってすぐに、海岸沿いの国道へ出て太平洋と被災したレールを右手に見る

昨日と同じ光景である

一般的にバスというものは一つ一つの集落を縫うように走り抜け、列車とは比べ物にならない数の停留所を通過していくが、停留所名は実態と合っているかは分からないものの〇〇(街の名前)→〇〇市街地→〇〇築港という風にパターン的に過ぎていくのが多いように感じた

いかにも計画的に開拓されてきた歴史を表しているようで楽しい

また、海沿いだからなのかアイヌ語で川や沢を表す「内」を拝した地名が多いようだ

地図上でなんとなく眺めるのではまず気にも留めない通過点としてのその土地も、実際に目にして感じてみると興味がそそられるものである

日高路とはいえ只海岸線に沿い続けるというわけではなく、時折海沿いから逸れて内陸の道に入ることもある

そちらの道沿いには至る場所に牧場が開かれ、放牧された馬がのびのびと草を食んでいた

海に目を奪われすぎて忘れていたが、日高は馬の街でもある

草を食む馬だけでなく寝転んで休んでいる馬もいて、気持ちよさそうである

こういうのを牧歌的な風景というのだろうか

翻って、海沿いの道から海岸を見やると、よく昆布が干してあるのが見えた

そういえば日高昆布というのもあるではないか

日高というところは広大で肥沃な土地のポテンシャルを存分に活かしているのだなと思わされた

30分ほど走って、ようやく初めての客が乗ってきた

はじめこそ誰もいなかったこの車内も、日高地方最多の人口を擁する浦河に近づくにつれて次第に地の人で賑わってくる

その有閑の紳士淑女ときては、風光明媚な車窓に釘付けになっている私とは対照的にただ前を見つめていたりよく分からない方言で談笑しあったりしている

遠い土地の言葉に触れられるのも公共交通で旅をする醍醐味であろうがしかし、その会話のほとんどが常から内地で聞いているのと同じ感染症の話題であるから時勢を恨む

静内から2時間弱でいよいよ浦河に達し、病院やら役所やらでその大勢が降りていったところでちょうど整理券発行機が壊れてしまった

停留所毎に運転手が都度機械を直しに乗車口までやって来るので遅れが心配されるも、幸いにして杞憂に終わり、ほぼ定刻通りに様似停留所(様似駅跡)に到着

乗ってきたこのバスは終点の様似営業所で系統と行先を変え、引き続き様似営業所発広尾行となって再びこの様似停留所へ引き返してくる

つまり結局乗る車両は変わらないのだが、様似駅(跡)を見学するために一旦降りた

ありがとう日高本線と書かれた横断幕

みどりの窓口があった場所は、バスの切符売り場となっていた

願わくば、苫小牧から続くこの140kmの道程を鉄道で辿ってみたかったものだ

何が残されているわけでもない駅構内を10分程見学し、様似営業所から引き返してきたバスに乗り込む

5人ほどいた乗客は2人に減っていた

旅行者の風貌だったので私と同じく襟裳岬までかと思ったが、途中にあるキャンプ場で2人とも降り結局また自分1人になってしまった

このまま順調に襟裳岬まで行けると思っていたが、予想外のアクシデントが起きてしまった

感染症拡大の影響で、襟裳岬まで行っていたバスがその11km程手前のえりも郷土資料館で運転を取りやめるようになっていたのだ

確かに様似駅に引き返してきた際の行き先表示が”広尾”ではなく”えりも郷土資料館”になっていたので嫌な予感はしていたが、まさか本当に襟裳岬まで行けなくなるとは思わなかった

降りる際に運転手に徒歩での所要時間を訊くと、3時間以上はかかりますよとの返答

気持ちの整理がつかないまま何も無い土地に放り出されて、情報収集の不足を悔いながら渋々襟裳岬へ向かって歩きだす

歩きながら冷静に考えると、これでは襟裳岬に着く頃には観光どころか15:10のえりも岬から広尾へ向かうバスにすら間に合わないことに気づく

時刻は正午を過ぎたところである

歩くのはよいが、1日2本しかないバスの2本目に乗れないと旅そのものの遂行が不可能になるため藁にもすがる思いで近くにあった日交ハイヤーというところに電話をかけた

幸い繋がり、配車をお願いした

出費が嵩むが仕方ない

なお、バスのダイヤ改正(改悪)があったことを知ったのはこの車中である

またこの日交ハイヤーは、本社が浦河にあり襟裳営業所は赤字のため、たとえ繁忙期のGWだろうが土日祝は休みらしく、今日がたまたま平日だったのでやっているとのことだった

今日がたまたま平日の金曜日で、前後は土祝であるためあと一日でもどちらかにズレていたらと思うと…

風極の地へ続く道は高低差が激しく、ここを歩いて行くのは苦労しただろうな、と人生で初めて乗るハイヤーに揺られながら思うのであった

20分程で念願の目的地に到着

道央と道東を劃かつ日高山脈のその麓、襟裳岬である

ハイヤーのここまでの料金は3830円だったので5030円を出してお釣りをもらったが、思えばそのまま5000円をチップも兼ねて渡せばよかったと後悔した

何かと後悔してばかりの旅である